LINEの「ミニアプリ」推進のキープレイヤーであるKaiaは、どのようにして1億人以上のユーザーをスムーズにWeb3の世界へ導いているのでしょうか?


LINEは「Mini Dapp」を発表し、新たな挑戦を始める
2025年初頭、LINEのWeb3エコシステム開発を担当する子会社LINE NEXTが、世界中のユーザーに向けて複数のMini Dappを正式に発表しました。
Dappは「Decentralized Applications」の略で、つまり「分散型アプリケーション」を指します。これはブロックチェーン上に構築されたアプリのようなものです。LINEが最初に発表したMini Dappは主にゲームで、これらのゲームは別途ダウンロードする必要がなく、LINEを開くだけで利用できます。
さらに重要なのは、すべてのLINEユーザーが内蔵された暗号ウォレットを通じて、各アプリケーション(ゲーム)からの報酬を獲得できることです。同時に暗号資産の取引も可能です。
ブロックチェーンやWeb3の分野では、「ブレークスルー」が常に最大の課題でした。使い方がわからない人は、これらの分野に触れることがほとんどありません。しかし、LINEのこの一手によって、日本、台湾、タイ、インドネシアなどのLINEユーザーが活発な市場で、痛みを感じることなくWeb3の世界に一歩を踏み出すことができました。
LINE Mini Dappの背後にあるのは、ブロックチェーンエコシステム「Kaia」です。Kaia財団のマーケティング副社長であるJohn Cho氏は、LINEには約10億の登録ユーザーと約2億の月間アクティブユーザーがいると述べています。ユーザー数が多いだけでなく、これらのユーザーの消費力も高く、特にLINEプラットフォームでスタンプやゲーム内アイテムを購入することが大好きです。これが、ゲームを中心としたWeb3アプリケーションに大きな商機がある理由です。
このため、Mini Dappの最初の波はゲームアプリケーションが主打となっています。もちろん、ゲーム自体が楽しいことが重要ですが、最も注目すべきは、ブロックチェーン上に構築された報酬メカニズムです。
もし報酬が暗号通貨などのデジタル資産に変われば、同じブロックチェーン上でクロスプラットフォームで流通し、より自由に使用でき、中央管理の束縛を受けません。例えば、ユーザーはトークンを自由に取引、売買でき、プラットフォームが倒産しても、暗号通貨はチェーン上で流通し続け、消えることはありません。
さらに、John Cho氏は「Web3の普及の鍵は、体験を直感的でスムーズにすることです」と強調しました。これらのMini DappはLINEアプリケーションに直接組み込まれており、内蔵ウォレットや暗号通貨交換、将来的に追加される可能性のある法定通貨のチャージ機能を統合しているため、ユーザーは複雑な技術的な詳細を理解する必要がなく、アプリをダウンロードすることなく、LINEを開くだけでWeb3アプリケーションにアクセスできます。
将来的には、LINEのMini Dappはソーシャル、Eコマース、取引などの分野に拡大する予定です。公式によれば、2025年までに1,000以上のプロジェクトを展開することを目指しています。
Kaiaエコシステムの過去と現在
LINE Mini Dappは2025年に登場しますが、Kaiaはブロックチェーン業界の新参者ではありません。
Kaiaは、KlaytnとFinschiaという2つのブロックチェーンが統合されたもので、韓国の通信ソフトウェア大手Kakaoと日本のLINEによって開発されました。そのため、Kaiaは2つの大手テクノロジー企業のDNAを持っています。
John Cho氏は、「KlaytnとFinschiaはどちらも2019年に誕生しましたが、位置づけが異なります。Klaytnはパブリックチェーンであり、Finschiaは当初プライベートチェーンで、主にLINEのWeb3製品とサービスに使用されていました」と説明します。
パブリックチェーンは、オープンで分散型のブロックチェーンを意味し、誰でも参加して取引を検証できます。例えば、EthereumやBitcoinがこのタイプに属します。一方、プライベートチェーンは特定の組織によって管理され、許可されたメンバーだけが操作でき、通常は企業内で使用されます。
Finschiaが当初プライベートチェーンであった理由は、2019年の日本の保守的な暗号法規に関連しています。当時、LINEは日本の上場企業として、Web3ビジネスを控えめに運営する方法を選びました。そのため、このチェーンはLINEの製品サービスをサポートするためだけに使用されました。
2023年末、LINEはプライベートチェーンをパブリックチェーンに転換することを決定しました。しかし、John Cho氏は、2023年以降のブロックチェーン市場の競争が激化し、特にLayer 2(第二層ブロックチェーン)ソリューションの台頭により、単独でパブリックチェーンを運営する難易度が高まったと説明します。この時点でLINEはWeb3製品の開発に長けていましたが、パブリックチェーンの維持に関する経験はほとんどありませんでした。
📍Layer2 :Layer2とは、第一層ブロックチェーン(例えばEthereum)の上に構築されたネットワークで、取引速度や処理量を向上させる技術を利用して、別のチェーン上で取引や計算を処理し、第一層の主ネットワークの負担を軽減します。
一方、Klaytnはすでに数年にわたるパブリックチェーン運営の経験を持っています。過去に協力経験がある両者は、考慮の末、最終的に各自の財団のメンバーに提案し、Kaiaとして統合することを決定しました。「統合が完了した後、私たちは今、自信を持ってアジアのリーディングブロックチェーンエコシステムとして自分たちを位置づけることができます」とJohn Cho氏は語ります。
スーパーアプリを作るにはWeb3が必要?
LINE Mini Dappがゲームを超えて、次にソーシャル、Eコマース、取引などの分野に拡大し、全方位の「スーパーアプリ」となることを目指しています。生活に必要な様々なアプリケーションを集結させたアプリとして、中国の通信ソフトウェアWeChat(微信)はすでに成功例です。
しかし、WeChatはWeb3メカニズムを採用せずに成功を収めています。では、なぜLINEは多くの労力と資金を投じてこの取り組みを行うのでしょうか?
John Cho氏は、UX/UIとビジネスモデルの観点から見ると、WeChatのMini App(中国では小程序と呼ばれる)は確かに非常に成功していると認めていますが、LINEはWeb3特有の価値を提供したいと考えています。
「LINEはInstagram、Facebook、YouTubeなどのプラットフォームと競争し、ユーザーの定着率を確保する必要があります。そのため、ユーザーを引き付け続ける新しい方法を探さなければなりません」とJohn Cho氏は述べ、競争が激化する市場では、ユーザーがより価値のある体験を求め始めると指摘します。
その鍵となるのが、ブロックチェーンがトークン化(Tokenization)を通じて、LINEユーザーに通貨価値のある「報酬」を提供することです。このメカニズムにより、ユーザーは長期的にMini Dappsを利用する動機を持つことになります。
しかし、John Cho氏は、長い間、ブロックチェーン製品は技術に駆動されることが多く、真の「ユーザーのニーズ」から出発していないことを認めています。そのため、多くのアプリケーションが主流市場に浸透することができませんでした。しかし、Kaiaの戦略はこのパターンを打破することです。「私たちの目標は、Web2ユーザーが新しい技術を学んだり、使用習慣を変えたりすることなく、Web3に簡単に移行できるようにすることです。これがKaiaと他のブロックチェーンエコシステムの最大の違いです。」
Kaiaが誕生してから、LINE Mini Dappのインフラストラクチャ構築に迅速に投入されました。そして、Kaia財団はKaiaエコシステムを構築、運営、維持する主要な非営利組織です。